田中 |
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本日はお時間をいただきまして恐縮です。
いきなりですが安西さんと書との出会いは? |
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開明(株)代表取締役・田中葉子とTIS理事長・安西水丸氏に対談の様子 |
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安西 |
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小さい頃は書を習っていたんですよ。母は絵を描く人というか芸術家が嫌いだったんですけど、書だけはOKで、寺で習っていました。書のあとは剣道で、日曜日は本当に忙しかった。書は、先生には墨を磨れって言われてましたけど、家では墨汁でしたね。 |
田中 |
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私も学校の授業では、先生に墨を磨れって言われて、家では墨汁以外は使うなって言われて。 |
安西 |
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磨れって言うくせに、先生の添削の赤は墨汁なんですよね。(笑) |
田中 |
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先生はそうすると墨汁歴が長いですよね。 |
安西 |
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墨汁歴は長いですよ。初期の頃はプラスチック容器ではなかったですよね?黄色い缶に紫のひもがついていて。 |
田中 |
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そうなんです。昔の方には開明墨汁と言えば黄色いブリキ缶に紫のひもって。 |
安西 |
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墨汁は登録商標ではないんですか? |
田中 |
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それが違うんです。「開明墨汁」は登録商標ですが、「墨の汁」という意味で墨汁は一般名詞なんです。でも他社は別名で「墨液」とか使っています。 |
安西 |
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僕はイラストレーションの世界に入ってからもずっと開明墨汁を使っているんですよ。 |
田中 |
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ありがとうございます。 |
安西 |
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あんな変なものを作っているのはどこの会社だって思っていたんです。(笑)
僕は、漫画家の寺田ヒロオ先生にファンレターをたくさん送ったんです。あの先生は唯一返事をくれたんです。 |
田中 |
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トキワ荘の先生方は皆、開明墨汁をすごくたくさん使ってくださっていました。当時の漫画は、ほとんど弊社の墨汁で描かれていました。 |
安西 |
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開明墨汁は、耐水性がいいし、マーカーで上から塗ってもにじまないし。ベタは墨汁で塗って、線はポスターカラーで塗るんです。乾いてからポスターカラーを全部洗い流すとギザギザが出るんです。偶然性のギザギザを出したい。染め物でにかわを洗い流すの
と一緒。イラストレーターは画風が大事だから、画風を得るために色々なことをやるんです。今は普通のペンだけど、こういう試行錯誤があったから今があるんですよね。僕、墨汁に関しては田中社長よりよく知っているもん。社長なんか何も知らない。. |
田中 |
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おそれいりました。 |
田中 |
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「墨一色展〜150名のイラストレーター 墨汁に挑む〜」が、2009年3月25日 (水) 〜 3月31日 (火) に松屋銀座・7階美術画廊にて開催されます。それにしても東京イラストレーターズ・ソサエティ様で (注; 理事長: 安西水丸先生) 素敵な展覧会を企画していただいて、ありがとうございます。とにかく、出品者の多さにびっくりです。 |
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『墨一色展』 〜150人のイラストレーター 墨汁に挑む〜
2009年3月25日(水)〜31日(火)
松屋銀座 七階 美術画廊(入場料無料)
詳しくはこちら・・・ |
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安西 |
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松屋でできるっていうのも嬉しくてね。 |
安西 |
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「墨一色展」は全てのイラストレーションを何種類かの開明の墨汁で描くわけですが、青 (花仙青墨) や茶 (花仙茶墨) が (東京イラストレーターズ・ソサエティ) 理事会で結構話題になっていたんです。 |
田中 |
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あれらの商品は淡墨にする (薄める)と青や茶の色が出るんです。実行委員の先生方が色々試してくださいました。 |
安西 |
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墨の濃淡で表現がどうなるのかが面白いよね。 |
田中 |
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今回の展覧会では、会場真ん中に安西先生の屏風絵を飾ります。先生、どんなイメージのイラストレーションなのでしょうか? |
安西 |
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それは見てのお楽しみだよ。 |
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